About Kevin O'Neill<br>マリブサンダルのファウンダーに聞くブランドのこと、自身のこと。

About Kevin O'Neill
マリブサンダルのファウンダーに聞くブランドのこと、自身のこと。


マリブサンダルズのファウンダーに聞くブランドのこと、自身のこと。

カリファルニア州ロサンゼルスからクルマで30分の場所にあるマリブシティ。Kevin O'Neillはその地で〈マリブサンダルズ〉を立ち上げました。いまも当地にアトリエを構え、日々、プロダクトを生み出し続けています。〈マリブサンダルズ〉のことを知ってもらうには、Kevinを知ってもらうことが一番。というわけで、彼の半生をマリブの自宅で聞いてきました。

 

MLBの選手を経てファッションの世界に。

ーKevin、まずは自己紹介をお願いします。

 

Kevin(以下、K):1968年8月2日に、カリフォルニア州のサンタ・ポーラという街で生まれました。育ちはワシントン州のロングビューという田舎町。幼稚園から高校までそこで過ごしました。

 

ーどんな子供だった?

 

K:活発な子供だったね。いろんなスポーツをやっていたけど、なかでも野球が一番好きでした。結果として奨学金をもらって、「California Lutheran University」にピッチャーとして入学したんです。卒業後は、ドラフト外でMLBのチーム「サンディエゴ・パドレス」と契約を結んで、晴れてプロ野球選手に。

 

 

ー幼少期の夢が叶う形になったと。

 

K:そうなんですけど、腕の怪我もあって次のシーズン前にクビになってしまって。腕を治したあとはオランダのアムステルダムにある野球チーム「MINOLTA」でプレーしました。けれど、再び腕を痛めて野球選手としては引退することになってね。

 

ーそこからキャリアを一変させていったわけですね。

 

K:大学で心理学の学位を取っていたから、スポーツ心理学を勉強し直そうかとも考えたけど、再度大学に行く気にはなれなくて。それならばとスポーツマーケティングの職を探して、飛び込みでプロテニスのプロモーション会社の門を叩いたんです。いま思い返すと、突発的な行動すぎて恥ずかしいよね(笑)。

 

ーそこで無事、採用されたんですか?

 

K:運良くインターンとして雇ってもらって、その後はフリーのセールスマンになりました。その頃に、小売店のスタッフと頻繁に連絡を取って「どの商品が売れたか」とか「何が流行ってるのか」を聞いている内に、マーケティングの楽しさに気づいていってね。とにかく働きまくって、ライバルのセールスマンたちより長時間労働したり、事細かなレポートも作成したりして。 

 

ーその働きが評価されたんですよね。

 

K:これも運良く、そのレポートから僕の仕事ぶりを見学しに来たりしてましたね。そこからトントン拍子にことが進んで、アクセサリー販売部門の職も経験して。ちょうどレイブシーンが盛り上がってきた時期で、レイバーたちに向けたマーケティングをして、バケットハットやサンバイザー、ロングソックスなんかを相当売ってたと思います。その後は雑誌のアパレル部門の立ち上げを手伝い、Snoop Doggにジャージを作ったり、Jay-Zにフーディーを送ったら気に入ってくれたりも。いい思い出です。

最近生まれたというKevinの息子、オットー。家族との時間も普段から大切にしている。

 

ー90年代後半から00年代は、ファッションの過渡期とも言える時代でしたよね。

 

K:そうだったね。ただ企業での仕事は、世代交代や活性化のためにしばらく働いたら辞めることがほとんど。それを知っていたから、次は自分でなにか始めようと思って、Tシャツやキャップのビジネスをスタートしたんです。キャップの会社はNBAやNHLなどのプロスポーツリーグの商品を生産販売していて、その流れで、試合前後に選手たちが着替えやシャワーをするときに履けるサンダルを開発したんだ。機能性や履き心地を重視しながら、サーファーのアイテムでもある「ワラチ(ワラーチ)」のデザインを落とし込んでね。それが〈マリブサンダルズ〉の始まりです。

 

ーそこから、本格的に〈マリブサンダルズ〉を立ち上げたわけですね。

 

K:当時人気だったサンダルは、どれもストラップを留めたり引っ掛けたりしなくちゃいけなくて、それが煩わしくて個人的に好きじゃなかったんだ。それと、ビーチタウンのマリブに住んでいるのもあって、普段履きができて、かつ高品質でデザイン性の高いサンダルが欲しかった。だったら自分で作ろうと思って、本格的にサンダル作りをスタートしたんです。

実はいまでも、メジャーリーグの選手やチームにプロモーションの一環としてサンダルを提供していて。エンジェルスにも数箱送ったから、もしかしたらShohei Ohtaniも履いてるかもしれないね(笑)。

 

 

ーデザインのインスピレーションは、メキシコのサンダルであるワラチ以外にもあったりしますか?

 

K:昔のカルチャーが好きで、60〜70年代くらいの雑誌や本を集めているんです。それを眺めているとインスピレーションが湧くことがありますね。それと、その年代のヒッピーカルチャー、サーファーカルチャー、ビーチカルチャーも好きで、影響を受けていると思う。

 

K:その流れで、最近はeBayで古いTシャツや雑誌などをオークションで競り落とすのにハマっているんだよね。eBayでずいぶんお金を使ってるけど、好きなものを見つけるとつい買っちゃって。それと、ビンテージTシャツはプリントのデザインだけじゃなく生地の質感も好きで、そういった温もりを感じられる品質を、〈マリブサンダルズ〉でも作っていきたいと思ってる。

 

ー最近の〈マリブサンダルズ〉は、環境に配慮した素材も使っていますよね。

 

 

 

K:ヴィーガンレザー(動物そのものや、動物虐待に繋がらない素材)や、天然クレープゴムなんかも使用しています。ミッドソールをクレープゴムでラップしたものが最もグリップが良くて、クッション性の高い天然ゴムだと思っていて、かつ素朴で自然な見た目に仕上がるから、とても気に入っているんです。ちなみに編み込み部分は、すべて手作業。ひとつ一つ、職人によるハンドメイドで。

 

ーこれから発売されるアイテムでイチ押しがあれば教えてください。

 

K:サンダルの色だと、今日履いている「ZUMA LX」(2022年秋冬から展開予定)のようなコヨーテ・ブラウンだね。もちろん今販売中の「ZUMA」も気に入ってる。あと、日本では展開されていないんだけど、「リトル・デュード・ブーツ」と呼んでるスリッパだったり、2023年以降に日本でも展開される予定のトートバッグなんかもおすすめしたいね。

 

ウェブメディア『HOUYHNHNM』では、Kevinがガイドするマリブシティの記事を公開中です。そちらも合わせて、お読みください。

 

Photo_Christopher Cloud
Text_Mikio Nakazato
Edit_Keisuke Kimura、Shuhei Wakiyama(HOUYHNHNM)